ーー 大会スーパーバイザーの宮塚英也さんが本番のレースコースを何度も視察し、参加者が押さえておくべきポイントなどを3種目それぞれで伝授する攻略法コーナー。まず最初のアドバイスは注目の高規格道路をメインとして走るバイク編から。参加者目線でとらえた現地動画も交えて紹介しよう ーー
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《バイクコースマップ》 ※タップして拡大できます
バイクコースのトピックは何と言っても函館・江差自動車道がメインとなる点です。
国が管理する自動車専用道路を通行止めして使用するアイアンマン。これは日本で始めてとなり、さらにはレース前日まで実走ができない(前日にコースツアー・バスが予定されています)わけですから、参加者たちは当日、この高規格道路を初めて自転車で走る日本初のトライアスリートとなるわけす。
レース当日、参加者は国が管理する高規格道路を日本で初めて自転車で走行するトライアスリートとなる!
コースの97%が自動車専用道路
スイムアップしてトランジションを済ませた選手たちは、まず北斗市の海岸線を通る国道228号線を西へ走ります。
そしてスタートしてから2km地点にある流渓橋(マップ下の青い四角エリア)を越えたあと左折し、その橋の下を通って Uターン(※最後のコース動画でルートを紹介しています)。その後、先に待つ北斗富川インターチェンジ(マップ下/ポイントA)に入るため右折し、本線へ合流する坂道を上り切るといよいよ自動車専用道路がレースの舞台となります。
コースのメインはこの高規格道路を約3往復。(マップに記載されている、A〜D の順路で走行します)
函館・江差自動車道の終点となる木古内IC(ポイントC)から228号線へ下りたあとは、約2kmでバイクフィニッシュとなる ふるさとの森公園 に到着します。
つまり、バイクコースの97%が自動車専用道路となるわけで、この区間の攻略が大きなポイントとなります。ここでは函館・江差自動車道のコースプロフィールを中心に説明していきましょう。
アイアンマン世界選手権(コナ)をイメージさせるコース
今回のコースを(車で)実走したとき、私は「ハワイで行われるアイアンマン世界選手権のレイアウトに似ているな」と思いました。
函館・江差自動車道のレースコースでは山側に沿って走る区間が多い。だから平坦路がベースになりつつもコースの標高差自体はそれなりにあります。
ただ、アップダウン区間は自動車専用道路特有ともいえる、なだらかに上って、なだらかに下るレイアウト。
コーナーがあってもゆるやかなので、自転車だと感覚的にはほぼ直線路のはず。ですから本線を走っているときにブレーキを使うことはほとんどないでしょう。
コースの起伏部分はゆるやかに上り、緩やかに下るレイアウトが基本。上りではペダルにトルクを掛け続けなければならないが、下りは比較的楽にスピードに乗せやすいだろう
アイアンマン・ハワイのバイクコースもメインはハイウェイ。序盤にカイルア・コナの街中区域を走ったあとは、通称 “クィーンKハイウェイ” を往復します。
溶岩台地を舞台に、大陸的ともいえるダイナミックな起伏を含んだコースでの走行は基本的にはDHポジション。ハンドルバーを握ってのタイトなコーナーリング区間はなく、ブレーキをかけることもほとんどありません。
まさに、今回のバイクコース・レイアウトは共通している点が多いと感じたのでした。
<バイク高低差図>
コースの標高差は みなみ北海大会 が90m強。また、マップ上での獲得標高は1,450mです。
(ちなみに10月のハワイは標高差170m、獲得標高が1,772m)
この数値だけを見ると案外大きいと思う人はいるかも知れませんが、みなみ北海道大会 のようなコースレイアウトの場合、私はそれほど上りがキツイと感じたことはありませんでした。
それは直線のアップダウンのレイアウトを上手く利用してして走っていたからです。
ワインディングが続くような山岳コースならば、下りで十分に減速し、コーナーを立ち上がった後にペダルを踏み込んで坂を上っていくという区間が増えます。
上り始めから強いトルクをペダルにかけていかなければならず、消耗度も高まっていくでしょう。
体感的な獲得標高値は実データの3分の2
一方で みなみ北海道大会 のようなハイウェイ・コースがメインの場合、アップダウンが組み合わさった区間では、まず下りを有効活用することが重要になります。
つまり下り区間でバイクのスピードを乗せ、それを上りに生かすという走り方。下り切ったあとの惰性を上手く使い、スムースに上りへとパワーを伝達していくとも表現できるでしょうか。
下りから上りに切り替わったあと、できるだけスピードを殺さないよう、ギクシャクさせること無く徐々にフリー(後輪の)ギアを落として(チェンジして)いく。そうすれば、そのまま上り区間へ走りの勢いを繋いでいけますし、ペダルもより効率的に回す(出力する)ことができるでしょう。
下り区間では自動車専用走路のメリットを生かし、積極的にスピードを上げていきたい
一方で坂を上りきったあと、下りに移ったときもスムースにフリーギアを上げていき、ロス無くスピードを乗せていく。この切り替えを上手く利用するのです。
そんなスキルを駆使してレースを走った場合、私が体感するバイクコースでの獲得標高は実データの3分の2くらいでした。つまり私の経験則からいうと、獲得標高1,450mの みなみ北海道大会 は体感で1,000mくらいにすることが可能だという印象です。
ですので、これからの調整トレーニングでもギアチェンジをシミュレーションできるアップダウンコースを可能ならば取り入れ、ペダリングやパワーの伝達スキルをさらに磨いておきたいものです。
山間を抜ける区間で陸橋が数か所あるバイクコース
バイクの力が試されるコース
ここまで紹介してきた みなみ北海道大会 のようなコースレーアウトでは、ペダリングを休めることなく、ずっと出力し続ける区間が多くを占めます。
一方、私がこれまでいろいろな選手を指導してきて、こういった(常時ペダリング出力が必要となる)コースがあまり得意ではない日本人は多いように感じています。
さらに、みなみ北海道大会 は、往復それぞれの折り返しとなる 北斗中央IC と 木古内IC、そしてその間にある 北斗茂辺地IC(マップ下/ポイントD)で、エイド補給も兼ねて本線を一度下りるレイアウトになっています。
インターチェンジの上り下りでは、区間は短いものの本線を上回る勾配が待ち受けているのでそこでも脚を使わなければなりません。
まさにバイクの力が試されるコースといえるでしょう。
またコース上での風については、これはスイム同様に当日のコンディションに大きく左右される部分があると思います。意識すべきはフロントホイールのアッセンブル。私が何度か車で実走したときはおだやかでしたが、強い風が吹く場合も想定して汎用性のあるリムハイトなどを考えておきたいですね。(ディスクホイールは使用禁止)
※この攻略法コラムは宮塚英也さんの見解をまとめたものです。大会実行委員会からのアドバイスではございません
【動画でコースをチェックしよう!】
下記にて、バイクコースの特徴を紹介した映像が見られます。こちらも活用し、ルートマップと重ね合わせてレースをシミュレーションすれば、当日のに向けてのトレーニング・イメージも膨らませると思います。
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